2011/09/01

勾配とテーパー

角度の表現として、
『勾配』『テーパー』
の2種類があります。

意外と混同している方がりるのですが、
勾配とテーパーは違います。
勾配の英語表記がテーパーではありません。


では、何が違うのか。。。
勾配とは、水平面に対する傾きの度合い
テーパーとは、旋盤などにより、円錐状に加工した状態
を指します。


とかくと、いまいちよく解らないですね。。。

というわけで、図で見てみましょう。


 こちらが、勾配

でもって、
こちらがテーパー
















少し乱暴な言い方になってしまいますが、
左右対称の時に、中心軸に対して、
片側の角度が、勾配
両側の角度が、テーパー
となります。

このあたりを間違えて伝えてしまうと、
角度が2倍の製品ができてしまう可能性もありますので、
しっかりと表現する必要があります。

それでも紛らわしい形状といのはあります。
そのような場合は、
片角勾配 A°とか、
両角 2A°とか、
どちらか解るようにしておくと
親切かもしれません。

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2代目設計屋・仕事っぷり-m-tec
株式会社モールドテック
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・ 樹脂金型設計 / ・ ダイカスト金型設計 / ・ 製品設計
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2011/06/28

箱の金型設計 第8回 基本的な仕様の確認まとめ

箱の金型設計 第7回はコチラ





















設計前の5項目の確認事項について、まとめます。



● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性
  3a.抜き勾配が欲しい 抜き勾配3°(第4回より
  3b.角にRが欲しい R付けOK(第5回より
4.使用する成形機 第6回より
5.ゲートの位置、形状 ダイレクトゲート1点(第7回より


1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
収縮率とは、体積の変化率のこと。
設計時には、収縮率を必ず考慮しなければならない。
ちなみに、樹脂の種類によって、その値は異なる。

2.製品の取り数 1個取(第2回より
一つの金型で、同時にいくつの製品を成形するか。
金型の大きさに関係する。

3.製品の金型成立性 抜き勾配3°(第4回より、R付けOK(第5回より
金型で製品を取り出すために必要な修正を行う。
製品への、抜き勾配やR付け等。

4.使用する成形機 第6回より
成形機とは、金型から製品を取り出す機械。
使用する成形機によって、金型の寸法に制限が入る。

5.ゲートの位置、形状 ダイレクトゲート1点(第7回より
製品のどこから樹脂を流し込むか。



以上を踏まえて、
次回より、ようやく具体的な設計にはいります。(つづく)


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2011/05/03

箱の金型設計 第7回 基本的な仕様の確認その6~ゲートの位置、形状

箱の金型設計 第6回はコチラ





















すっかり更新があいてしまいましたが。。。
設計前の5項目の確認事項の最後の1つです。


● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性
  3a.抜き勾配が欲しい 抜き勾配3°(第4回より
  3b.角にRが欲しい R付けOK(第5回より
4.使用する成形機 第6回より
5.ゲートの位置、形状 ←今回はココ


5.ゲートの位置、形状
ゲートというのは樹脂の入り口のことです。

金型を設計する際には、製品の
・ 何処に
・ どのような形状で
樹脂を入れるかを決める必要があります。

適切な形状、位置を設定しないと、
樹脂が製品全体に行きわたらなかったり(ショートショット)
変な位置に線が発生してしまったり(ウェルドライン)
といった不具合が生じてしまいます。

また、ゲートの形状には、
ダイレクトゲート、サイドゲート、ジャンプゲート、サブマリンゲートなどなど
色々な形があり、
その製品の用途に応じてゲート形状を決定します。

今回の製品には、ダイレクトゲートを採用します。
直接製品の真ん中にゲートを落としたいと思います。
(詳細はまた後日。。。)


(つづく)

2011/04/12

箱の金型設計 第6回 基本的な仕様の確認その5~使用する成形機

箱の金型設計 第5回はコチラ





















設計前の5項目の確認事項の4つ目です。

● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性
  3a.抜き勾配が欲しい 抜き勾配3°(第4回より
  3b.角にRが欲しい R付けOK(第5回より
4.使用する成形機 ←今回はココ
5.ゲートの位置、形状


4.使用する成形機
金型とは、製品を作り出す為の治具、器です。
ただ金型だけがそこにあっても、何も役に立ちません。

金型を使用するためには
成形機に金型を取り付けなければなりません。
成形機とは、金型から製品を作り出す機械であり、
これに取り付けて初めて
金型としての役割を果たすわけです。

ですから、金型を設計する際には、
使用する成形機に適した設計が必要になります。


成形機から規制される内容は
主に次のようなものがあげられます。

・ 金型の大きさ 成形機に取付けられる型サイズに設計します。
・ ロケートリング穴径 金型と成形機の位置決めになります
・ ノズル寸法 樹脂の射出部に関する寸法です。
・ 突出し部寸法 突出し板を突出すためのエジェクターロッドの位置、径を確認します。

金型が成形機に取りつかないなんてことになりますと、
その金型はただの鉄の塊になってしまいます。
成形機と金型の関係は、よく確認して設計をすすめたいところです。


つづく

2011/04/05

箱の金型設計 第5回 基本的な仕様の確認その4~製品の金型成立性3

箱の金型設計 第4回はコチラ



















設計前の5項目の確認事項の3つ目です。

● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性
  3a.抜き勾配が欲しい 抜き勾配3°(第4回より
  3b.角にRが欲しい ←今回はココ
4.使用する成形機
5.ゲートの位置、形状




3b.角にRが欲しい

今回は製品の角部にR付けをしたいと思います。

下の図でいうと、
左のような状態から、右の状態に修正します。

角の状態
Rを付けた状態










PCのモニター、キーボードのキー携帯電話、など。
身近にある樹脂製品を見てみみると、
角部に丸みがあると思います。

一見ついていないようでも
よ~く見ると、小さなRが付いていたりします。
基本的に製品の角部はRです。


何故、角を丸める必要があるのか?
主な理由としては、
下記の4点があげられます。


● 製品上の理由
1.製品の耐久性
2.使いやすさ、安全性

● 金型上の理由
3.金型の耐久性
4.加工のしやすさ

1.製品の耐久性
製品をぶつけてしまった時に
角にRが付いている場合と付いていない場合では
その耐久性が違ってきます。

Rが付いていないということは、
製品が尖っているわけです。
それだけ製品が欠けやすくなってしまいます。


2.使いやすさ、安全性 
例えば、何かを運ぶ時
角が尖っている場合と丸みが付いている場合では、
持ちやすさは全然違います。

製品が角であったが為に
使用者が怪我をしてしまう
といったケースもありますので、
たかが丸みをつけるとは言え、馬鹿にはできません。

3.金型の耐久性
これは製品の耐久性と同じ事です。
金型だって、角で作るよりは丸みをつけた方が
当然、壊れにくいです。

金型が壊れてしまった場合、
そこから取り出す全ての製品に影響します。
もう、大惨事。恐ろしいことです。

4.加工のしやすさ
左のような凹形状の加工をするとき
角があると、どうしても刃物が隅に届きません。

この角をキレイに仕上げるためには、
放電など、別の加工方法をとらなければなりません。

別の加工方法をとるということは、それだけ時間もコストも掛ります。
このご時世、無駄なお金をかけている余裕はありません。出来る限り少ないの加工方法、工数で済ませたいものです。


ですから、この凹形状にRをつけて。。。


刃物で容易に加工できるような形状に修正します。

ここでポイントとなるのがRの大きさです。
ただ、Rをつければ良いというわけではありません。
Rの大きさは刃物より大きくする必要があります。

なぜなら、もしRが刃物より小さいと、結局刃物は隅に届かず。
Rを付けないのと同じ状態になってしまうからです。


以上のような理由から、
対象となる製品に特に制限が無いのであれば
角部には刃物より大きなRをあげることが、

よい製品を作るコツとなります。


今回の製品に
前回の勾配と今回のRを付けたものが
こちらになります。


















つづく

2011/04/01

パテ パーティングライン

パーティングラインとは、金型の固定側と可動側の分割面のこと。
PLと省略されて呼ばれることが多い。


分割面を設定する際には
製品にバリ等の不具合が生じないように
そして、加工がしやすいように
設定をする必要があります。

また、設計変更が出る可能性がある部分については 
後からチューニング(調整)しやすいようなPLを作成します。

PLは製品でラインになります。
ラインが出てしまうのが好ましくない製品に対しては
特に注意が必要になります。
場合によっては、
あえてスライドコア等で処理することもあります。

2011/03/29

箱の金型設計 第4回 基本的な仕様の確認その3~製品の金型成立性2

箱の金型設計 第3回はコチラ



















設計前の5項目の確認事項の3つ目です。

● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性
  3a.抜き勾配が欲しい←今回はココ
  3b.角にRが欲しい 
4.使用する成形機
5.ゲートの位置、形状




3a.抜き勾配が欲しい

金型から製品をスムーズに取り出すために、
製品に抜き勾配を設定します。
(抜き勾配について参照記事/ヌキ 抜き勾配(ぬきこうばい)


現行の製品はこのような断面になっています。
縦壁は90°、すなわち抜き勾配はありません。

この状態ですと、製品を取り出す際に
金型と製品がこすれてしまい。
製品や金型に悪影響を及ぼしてしまいます。




それを解消するために次のように抜き勾配を設定します。


90°だった壁に勾配がついているのが解るでしょうか?

このように勾配を設定することで、
製品の金型からの離形性をよくし
金型や製品の破損を防ぎ、
良品を成型することが可能となります。





・ 抜き勾配の効果

型閉じ状態
型開き状態
製品に勾配を付けることで、金型と製品のこすれ(干渉)を解消する。


成型数や製品形状、樹脂の種類等によって、
勾配を付けない場合もあります。
また、金型製作上必要とはいえ
製品形状をいじることになりますから、
客先との入念な打ち合わせが必要となります。



ちなみに、今回は抜き勾配を3°つけました。

つづく

2011/03/25

ヌキ 抜き勾配(ぬきこうばい)

抜き勾配とは、
製品の金型からの離形をよくするためにつける角度のこと。

勾配が不十分な状態で、成型をした場合。
離形不良が生じてしまい。
製品や金型の破損につながってしまいます。


・ 抜き勾配がない場合
型閉じ状態
型開き状態

・ 抜き勾配がある場合
型閉じ状態
型開き状態


成型数が少ない場合や樹脂の種類によっては
例外的に勾配がないまま金型製作をする場合もありますが、
原則として、金型を製作する上で抜き勾配は不可欠なものです。

2011/03/22

箱の金型設計 第3回 基本的な仕様の確認その3~製品の金型成立性1

東北地方太平洋沖地震で被災された方へ
心よりお見舞い申し上げます。


箱の金型設計 第2回はコチラ



















設計前の5項目の確認事項の2つ目です。

● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数 1個取(第2回より
3.製品の金型成立性←今回はココ
4.使用する成形機
5.ゲートの位置、形状




3.製品の金型成立性

客先から支給された製品データが、
そのまま金型データとして使用できることは
実は滅多にありません。

製品データを金型として成立するように
修正する必要があります。

今回のような比較的形状が単純な製品でも、
金型でのことを考慮して色々と
修正したいところが出てきます。


今回の箱の断面はこのようになります。

















いきなり結論を言ってしまいますと、
この製品に対して、修正を加えたいのは2点

3a.抜き勾配が欲しい
3b.角にRが欲しい

となります。
次回、各項目について説明したいと思います。


第4回につづく

2011/03/11

シユ 収縮率(しゅうしゅくりつ)

収縮率とは、体積の変化率のこと。

モノが液体から固体になる時には体積が変化します。
その変化の比率を表したものを収縮率といいます。


例えば、
水が氷になる時に体積が変化するのは小学校の理科で習っていると思います。
式で書くとこんな感じです。

(氷の体積)×(収縮率)=(水の体積)


金型の場合
支給されてくるのは製品のデータ(固体)
金型には溶けた状態で流し込む(液体)ので
支給データに収縮率を掛けてから設計をする必要があります。

(支給データ)×(収縮率)=(金型データ)

この収縮率は使用する樹脂の種類、グレード。
また、成型する製品の肉厚、大きさなど
様々な条件によって変わってきます。


ちなみに100mmのモノに対して収縮率 S=5/1000 という指示があった場合
金型設計する上での寸法は

100 × 1.005 = 100.5

となり、実際の製品寸法より0.5mm大きく金型を作らなければなりません。


この収縮率を入れ忘れたり、間違えたりすると、
根本的に違う大きさのモノが出来てしまうので
慎重かつ確実にデータに反映させる必要があり、
絶対に間違えてはいけない項目のひとつです。

2011/03/08

箱の金型設計 第2回 基本的な仕様の確認その2~製品の取り数

箱の金型設計 第1回はコチラ


設計前の5項目の確認事項の2つ目です。


● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率 S=5/1000(第1回より
2.製品の取り数←今回はココ
3.製品の金型成立性
4.使用する成形機
5.ゲートの位置、形状




2.製品の取り数

一つの金型で何個の製品を同時に成型するかということ。

下の絵を見ても解るように、
取り数によって、金型のサイズ、レイアウトが大きく変わってきます。







また、一つの金型に複数の異なる部品を設定することもあります。
設計を進めてから、実は取り数が違った!!なんてことになりますと
かなり無駄な時間を使うことになりますので、
確実に確認しなければなりません。


今回は、箱の1個取とします。

2011/02/23

箱の金型設計 第1回 基本的な仕様の確認その1~収縮率

箱の金型設計 第0回はコチラ



















さて、上の箱の金型を設計することになったわけですが、
金型を設計する前段階として、
色々と確認しておかなければならいことがあります。

細かく言えばキリがないのですが、
最低でも次の5項目は設計前に確認したいところです。

● 設計前に確認したい5つの項目
1.製品の収縮率←今回はココ
2.製品の取り数
3.製品の金型成立性
4.使用する成形機
5.ゲートの位置、形状


1.製品の収縮率
金型から取り出される製品は当然ながら固体です。
しかし、金型には液体の状態で樹脂が流し込まれます。

『氷が水になると、体積が増える』
というのは小学校で習ったかと思いますが、
樹脂でも同じ事が言えます。

型に流し込まれた液体の樹脂が
冷やされて固体となった時に少し縮むわけです。

ですから、
金型は実際の製品の大きさより
若干大き目に作る必要があります。

この大きさの比率を収縮率といいます。
この収縮率は樹脂の種類、グレードによって異なります。

この収縮率が解らないことには
金型に製品が配置できませんから、
何においても、一番初めに知っておきたい情報です。


今回の収縮率はS=5/1000とします。


第2回につづく

2011/02/15

箱の金型設計 第0回

金型設計の流れを知ってもらうには、
一つの製品使って実際に設計してみるのが
一番早いと思います。

というわけで、



















コチラの箱状の製品について
金型設計を何回かに分けてすることにしました。

ちなみに、この企画は、
私のメインブログでやっていた企画の
改訂版になります。

『どこかで見た。。。』
と思った方はそっと見守ってやって下さい(汗)。


第1回につづく
第1回 基本的な仕様の確認その1~収縮率

2011/02/09

序-金型とはなにか?

金型とは、
大量に同じものを作るときに欠かせない道具
です。

金型はあくまで最終製品を作り出すための道具のひとつですから、
決してそれが主役というわけではありません。
しかし、ものづくりにおいて非常に重要な役割を担っています。


よく例えに使われるのが、たい焼きです。

たい焼きをというものは、
型にあんこと生地を入れて、挟んで焼き上げる。

あの型、あれも一種の金型です。
一番身近で単純な金型だと思います

あの型があるおかげでたい焼き屋さんは
同じ大きさのタイヤキを常に大量に提供することが出来ます。

もし、型がなかったら。。。
当然、同じような形でたい焼きを提供することはできません。


たい焼きの型の様なものは別としても、
普段金型を目にする機会は、早々ないと思います。
はっきり言って、金型業界は裏方です。
しかし、皆さんの使っているものの多くが
金型から成形されています。

ものづくりに欠かせないにも関わらず
あまり知られていないもの。
それが金型です。


このブログでは、
私の仕事でもある金型設計について書きつつ、
金型のことを知ってもらえたらと思います。